ジョブズと一人の禅僧の僧侶、乙川弘文の物語。二人の共通点は「一匹狼」「であり「反逆児」、二人が心をよせあったのは自然のこと。物語は、カリフォルニア州にある「タサハラ禅マウンテンセンター」の禅道場で座禅をしながらさまざまな体験、経験を積む。弘文との問答は、抽象的なものばかりで、「間」「無」「空間」「関連性」などに関して「感じる」ことを中心に学んだ。その結果、歩行禅(経行:きんひん)の体験から「iPodの円形の操作盤」を発想。また、弘文の問答に「Yes、No」で捉えたことに対し、「それは不条理、それが無」と言われ、ジョブズよく理解できなかった。が、その経験からアップルを復活させた大きな決断ができた。1997年夏、ジョブズがアップルに復帰後の決断である。それは、複数あった商品を4つに絞り、ただそれだけのために2年間は働いた。結果、iMacが誕生、当時もっとも売れたコンピュータになった。

 その後、再び禅センターにて、書道を学ぶ。「書は人なり」=>迷いがすぐに形に表れる、やり直しがきかない、その瞬間に書いたことがすべて、一回限り。ジョブズが書いたのは「誤」。うまい下手ではない。半紙に書かれた「誤」を取り巻く空間、禅堂の中に空間、禅堂は空間と空間に造られたものから成る。つまり、建造物と空間が融合したのが禅堂。空間に存在するものと、存在しないもの、この二つが関連性を感じる。ジョブズは、このような弘文との問答から「空間」を掴めた。それがきっかけとなったかはわからないが、iPod、電話、インターネット・コミュニケーターの3つを融合させたiPhoneが誕生した。ジョブズは、「間」から「空間」を捉え、そこには「存在するものと、存在しないもの,この二つが関連性を感じること」を形にしたことになる。iPodは、存在するものが物理的な機械、つまり「iPod」で、存在しないもの「音楽を自分が持ち歩く」ことを形にしたことになる。そして、革命的な機械「iPhone」は、空間に存在しないものを次々と創造していく「コミュニケーター」機能を付けたことで、「関連性がすべてを形作る空間」を演出したことになる。この関連性がこれからのビジネスにおいて非常に重要なキーワードになることを示唆していることだと思う。ある雑誌でグーグルのシュミット会長が「新しい時代における「幸せ」は唯一『偶然の出会い』からしか得られない」と発言したことに、、シュミット氏も、この関連性に気付いていたのではないかと思う。スマートフォンはパソコン、携帯電話を融合させ、新しい関連性を作り出している。この新しい関連性の空間をどのように攻略するか、すでに戦いは始まっている。

 

今から四百数十年前、南海のある無人島にオランダ人が初めて上陸した。そこには鳥が異常に繁殖し、鳥だらけの島だったが、奇妙なことに鳥は、羽はあるが飛ぶことができないのだった。丸々と太って走ることもできず、歩くのがやっとの滑稽な鳥だった。しかし、鳥たちは幸せで、天敵がいないので逃げる必要もなく、食べ物もいくらでもあるので、エサを探す必要もなかった。オランダ人はその鳥を「ぶた鳥」と呼んだ。食べてみると脂がのってうまい。捕まえてせっせと本国へ運んだ。島中至る所にいた鳥は、わずか数年で絶滅した。実話である。この「ぶた鳥」の話は現在の私たちに厳しい警告を与えている。

 一つは、人間も動物も本来は怠け者だということだ。動物は敵に襲われる心配がなければ動かなし、食べ物が十分あれば寝ている。ぶた鳥は飛ぶことも、歩くこともやめようとしていた。人間も同様に、できることなら苦労したくない、少しでも楽をしたいと、考える。二つ目は、人も動物も環境に順応するということだ。厳寒の地に生きる動物は皮下脂肪を厚く貯え、体毛を長く伸ばして寒さから身を守る。ペットフードを与えられて育った猫は、敏捷な動きができなくなり、ネズミに出会うと腰を抜かす。ぶた鳥もよちよち歩きしかできなくなったのも環境に適応してきたからだ。人間も同じである。厳しい環境は人を強くし、ぬるま湯の環境は人を弱くする。人は短期間でその環境に順応する。三つ目は、人や動物の機能は、使わなければ必ず衰えるということだ。足を使わなければ足が弱くなり、頭を使わなければ考える力が衰える。使わなければ衰えることを「廃用性萎縮」という。ぶた鳥は飛ばないから飛べなくなった。人間も、恵まれた環境で「楽をしたい」という本能のままに生きれば「ぶた鳥」になる。

 

年はとりたくない、年をとるのはマイナス。
サムエル・ウルマンの詩「青春とは心のありようのことだ」・・・ここでは、青春が価値とされている。年をとっても心が若ければ青春だ、ということ。でも、なぜ年をとること、加齢することこそ価値なのだといえないか。世の中のいわゆる老人、ただ年を重ねただけの人たち、話をしてもあまり内容がない。でも、自分では内容があると思って権力やお金にしがみつく。そういう無内容な人が、さらに生き延びるために人の世話になっているのを見ると「ああはなりたくない」と感じるのは当然だ。つまり、尊敬できない。賢くない人を尊敬するということはできるものではない。でも、本当は、隠居、長老などの老人は『賢い』形容にふさわしい人たちだ。これを「賢老人」という。「敬老」とは老人を尊敬すること。けれども、肝心なのは中身。成熟した・・・、大人の・・・とかの言い方があるが、所詮、外見だけの話。現代人は完全に矛盾した人生観で生きている。

 老いることを精神の老成、精神が老いることだと捉えられないところに原因がある。つまり、多くの人は肉体の変化をもって人生の変化とする。肉体を人生の基準とする根強い癖がある。肉体を失うことの恐怖とは、すなわち、快楽を失うことの恐怖であるわけだ。

 人生とは快楽である。これを目的に思っている人は当然恐怖だ。快楽が無ければ、人生に何の意味があるのだと現代人は思っている。しかし、人生の目的は、本当に快楽か。肉体が衰えるのは自然。それは必然、自然現象。もし、人生を肉体を基準にして規定するなら、人生は生まれた時点から老いてゆくこと以外の何ものでもない。これに抵抗できない、老いることを否定するなら、人生を否定することになる。しかし、これは否定できない。年齢とは我々を超えた実在であるといえる。ここに人生と年齢の秘密がある。人生はそれ自体が、常に初めての経験。初めてということは、つまり未知。老いとは未知である。経験していないことは、本当はすごく魅力的なことだ。

プロセスをとらえる力、プロセスは「流れ」。モノではなく絶え間なく流れる「コト」としてとらえることが大切。モノとはプロセスを止めた状態。マネジメントをモノだけでとらえると本質はつかめない、なぜなら対象は万物流転しているからだ。プロセスでとらえる力とは、モノの関係性を読むということ。言い換えれば「情報と情報」や「知と知」の関係性のこと。一つの「知」は多くの知と関係しあっている。必ず何かつながっている。モノとしてとらえたら孤立する。知のつながりは重要。情報と知の違いは、情報は流通するが、知は流通しない。

テレビのスイッチを入れると多くのチャンネルから流れているのが情報。知は、思索とか行動を通じて自分のものになった情報で自ら主体的に使えるようになる。世の中に流れている情報を自分のものとして整理するには、対象の見方を持っていないとできない。見方は各自の経験や実績に根ざしている。知の関係性とは、経験者同士のつながりです。経験が連鎖し、話が終ったときにはお互いが新たな経験知を持つ。知をどうつないでいくかが「知の関係性」、すなわち「コト」のマネジメント。つまり、モノを固定してみると関係性が見えなくなる。アップルは技術、すなわちモノである。それらの関係性を組み合わせて新しいコト、あるいは物語を作ったのが、ジョブスが実現したイノベーションだったわけだ。日本はモノ的思考が強く、コト的思考は弱い。日本のITベンダーもモノ的思考で進んでいる。情報システムを関係性でとらえるということこそ実は重要で、ユーザーが気づかずに抱えている課題を掘り起りだす眼力が必要。現場の中に入り込んで、顧客さえもわからない要望や欲求を、関係性を共有して得た気づきからビジネスモデルに展開する。それをユーザに示し、あるべき姿について対話しながら実行していくことが必要だ。これからのミドルは、経営トップと現場を往還しながら、顧客との関係も総合してコンセプトを作り実行していくことがますます重要になる。では、どうすればミドルのリーダーが育つのか。どこかで話したいと思う。

 

第一に「意識の共有」です。
誰もがフォーラムやシンポジウムなどに参加したことがあると思います。参加する時、自分に関係があるか、興味があるテーマを選びます。そこに集まった人たちの共通の課題とも言えます。参加者は同じ思いを持つことで問題意識を共有できるわけです。これは不特定多数の参加による「意識合わせ」ですね。
第二は、「目標の共有」です。
意識の共有ができると、そのテーマに関していろいろ議論が始まります。具体的な話題を話し合います。何をやりたいのかがはっきり見えてきます。たとえるなら、家を建てるときの完成予想図ですね。目標は語るのではなく見せるものです。これは特定多数による「目標の確認」ですね。
第三は、「知識・知恵の共有」です。
目標を実現可能にする実施計画ですね。そのために必要な技術、才能、それらを持つ人たち、組織、資金などを共有します。つまり、実現のための実施計画とその要領という明確な役割という実質が見えてきます。目標は願望ではなく実質です。

第四は、「情報の共有」です。
すでに多くの企業が取り入れている情報共有化はこのステージになります。ここは実行なので、自分で新たに何かを計画することはありません。しかし、前段の3つの共有がしっかりしていないと混乱の要因になります。例えば、履歴書はその人を説明する情報です。志願動機は、その人の「意識」や「目標」の確認ですね。そして、何ができるのかは「知識・知恵」、となります。この3つを相手(企業)と共有することで、お互いのギャップを埋めることができます。これでコミットメントできれば内定です。その後は、お互いに情報を共有しさらにギャップを埋めていきます。ビジネスの世界も人と同じように企業の理念(意識)やビジョン(目標)、社員のスキル(知識・知恵)が、その企業の履歴書。これがコミットメント条件です。ヒト、モノ、カネが経営資源といわれていますが、この3つの共有化を社員にしっかりと理解させることが大事であるといえます。現在の社会は情報爆発時代とも言われております。情報の共有化だけが進むと、混乱や不安だけが先行し、ともすれば間違った行動につながります。第一の「意識」をまず共有することが非常に大事な時代になったわけですね。企業のマーケティングにおいて「ブランディングツールキット」という概念があります。これは、企業の理念(ミッション=意識共有)を明らかにし、企業の方向性(ビジョン=目標共有)を決め、企業の行動計画(ストラテジー=知識共有)を明確にして始めて企業と社会(顧客)とのギャップが埋まってきます。インターネット革命は、フラットな世界を作り、次の新しい時代の扉を開きつつあります。Tiwtter、facebookなどのSNSは、またたく間に広がり、様々なシェアリングが行われています。インフォーマルネットワークが起こす場のイノベーションはすでに大きく開かれてきました。オープン、ボトムアップ、ボランティアのインターネット文化は、クローズでありトップダウン、リーダーシップを主とする企業社会を脅かしています。本当の情報共有化社会を構築するには、上記の4つのシェアを十分理解して始めることが涵養であります。