2018/10/11(木) 13:31

■プラスチック製ストローは問題解決の入り口に過ぎない

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2018年9月ニューヨークで「持続可能な海洋経済に関するハイレベル・パネル」第1回会合が開催された。同会合に寄せた安倍総理のメッセージの中で「海洋プラスチックごみ問題については、G20大阪サミットでも取り上げ、世界全体で取り組むための実効性のある対策のイニシアティブを打ち出し、日本がこの問題への国際的対策を主導したい」と述べており、G20大阪サミットに向けて、海洋プラスチックごみ問題に対する日本政府の強い意志が窺われる。

G20大阪サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)が、2019年6月28日および29日に開催される。14回目にして日本初の開催となる。

近年G20で取り上げられる主な議題は世界経済、貿易・投資、開発、気候・エネルギー等で、来年も首脳会合のほか関係閣僚会合が全国8か所で開催される。

「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が6月15日および16日に軽井沢で行われる予定である。

2年前の2016年G7伊勢志摩サミットの環境大臣会合において議論した成果についてコミュニケが公表されている。その中で「[8.海洋ごみ]について、2015年G7エルマウサミットで合意された首脳宣言附属書の『海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画』に関して、今後の効率的な実施の重要性について再認識するとともに、G7として、各国の状況に応じ、優先的施策の実施にコミットすることにつき一致した」とされている。

しかしながら、日本の海洋ごみ問題への対応は決して迅速に行われたとは言えない。

G20大阪サミットに向けて、今年に入ってから6月に、2009年に施行された「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(海岸漂着物処理推進法:議員立法)を改正し、法律名も「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境((注)下線は筆者による)の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(海岸漂着物処理推進改正法:議員立法)と改めたうえで公布・施行された。改正法では、マイクロプラスチック(微細なプラスチック類)に関する規定が新たに設けられ、事業主の責務として、マイクロプラスチックの使用の抑制に努めることを企業に求めている。(ただし、強制力はない)国民の責務については、改正前の法律において海岸漂着物等の発生の抑制に努めるべきであることは規定されている。

海洋ごみ問題は世界的にみて喫緊の課題であり、以上のような日本の事情から、昨今「マイクロプラスチック」、プラスチック製ストローに関する関係業界の対応がメディアで報道されるようになったと思われる。

以下、すでに公表されている内容もあるが、グローバルな動向、日本政府の対応、関連業界の対応、そして世界の機関投資家の動きについて概観したい。

軽くて丈夫で成形しやすいプラスチックは、高度成長とともに広く普及し、レジ袋、使い捨て容器、ペットボトル、ストローなど日常生活には欠かせない存在になっている。

しかし、昨今、海中の有害物質が付着しやすく、生態系や人類の健康への悪影響が懸念される微小なプラスチックごみ「マイクロプラスチック」による海洋汚染が深刻化している。人類が住まない南極付近の海、魚や水鳥の体内からも検出されるなど想像以上に地球の広範囲にわたって汚染が拡散している。

2016年1月のダボス会議で「海洋のプラスチックごみは2050年までに魚の量を凌ぐ」との報告書を発表した。

欧州連合の欧州委員会は2018年1月に2030年までに使い捨てプラスチック容器・包装を域内でゼロにする目標を掲げた「プラスチック戦略」を表明し、5月に食器、ストローなど使い捨てプラスチック製品10種の使用をEU全域で禁止する法案を提出した。特に海洋汚染への影響を指摘されているプラスチック製ストローに関して紙製など環境負荷が低いものに切り替えるように求めている。さらに、EUは加盟国に対して2025年までに使い捨てのプラ製飲料ボトルの9割を回収するよう義務付けることも提案するなど、EUは世界に先駆けた対応を推進している。

世界のプラスチックは、従来、主に先進国からアジアの途上国に輸出され、リサイクルされてきた。今年に入り、アジア諸国でプラスチックごみ規制の動きが見られ、世界最大のプラスチックごみ輸入国中国が輸入禁止措置を取ったほか、ベトナム、タイも輸出制限、取締り強化を開始した。

韓国では、2018年1月からカフェ店内でのプラスチック容器の使用を禁止する「資源リサイクル法」が施行され、8月からは罰金制度も導入された。

2018年6月開催のG7(カナダ シャルルボア・サミット)では、海洋プラスチック問題等に対応するために世界各国に具体的な対応を促す「健康な海洋、海、レジリエントな沿岸地記者会のためのシャルルボア・ブループリント」を採択した。さらに2030年までのプラスチック代替品への切り替えなどを掲げた「海洋プラスチック憲章」をまとめた。日本は2016年G7(伊勢志摩サミット)で海洋プラスチック問題に対処することを確認したのにも関わらず、アメリカとともに署名を見送った。

海洋汚染問題への対応が遅れていた日本でも、ようやく2018年6月「海岸漂着物処理推進改正法:議員立法」が公布・施行された。ただし、改正法では、マイクロプラスチックの使用の抑制に努めることを企業に求めているが強制力はない。8月に海岸漂着物処理推進改正法第30条に基づき関係行政機関による「海岸漂着物対策推進会議」が設置された。年内に「海岸漂着物を総合的かつ効果的に推進するための基本方針」改訂案を取りまとめ、年度内に閣議決定する予定である。

さらに8月環境省では、第4次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月閣議決定)を踏まえ、かつ「海洋プラスチック憲章」に掲げられた事項、数値目標も含めて、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会を設置した。プラスチック資源循環戦略を検討開始し、2018年度中に答申が予定されている。2019年6月に日本で開催されるG20 に向けて遅ればせながら動き始めたのである。

関係業界では、マクドナルドは9月から英国とアイルランドの全店舗でプラスチック製ストローを紙製に順次切り替える。食品世界最大手のネスレは4月、自社製品の容器を2025年までに再利用、再生可能な素材に全面的に切り替える方針を打ち出した。

スターバックスは7月、世界で2020年以降のプラ製ストロー廃止を打ち出した。

アメリカ食品スーパー最大手クローガーは8月、レジ袋を再利用できる袋に切り替えるとは発表した。(日本では、例えばイオンが2013年にすでに総合スーパーでのレジ袋の無料配布を取りやめている)

そして、日本でもプラスチック製ストローの提供をやめる動きが出てきた。すかいらーくHD、セブン&アイ・フードシステムズ、日本ケンタッキー・フライド・チキンHDが提供中止を決めた。王子ホールディングス、日本製紙などの製紙業界、ストロー専業大手では紙製ストローなど環境負荷の低い製品開発を進めている。

2018年3月にメキシコで開催された「世界海洋サミット」で、欧州委員会、WWF、欧州投資銀行などが「持続可能な海洋経済のための金融原則」(ブルーファイナンス原則)を制定した。同原則は14項目からなり、海洋プラスチック汚染などの海洋問題について開発と保全の両立を見据えて投融資活動を推進していくことを掲げている。世界銀行、欧州投資銀行、イギリスの運用会社アビバ・インベスターズおよびウィリス・タワーズワトソンなど世界の機関投資家が、支持表明をしはじめている。

プラスチック問題は二酸化炭素問題とともにグローバルレベルで可及的速やかに取り組みを強化していかなければならない。日本としても、SDGs実施指針に基づき、各省庁、地方公共団体および関係業界が連携し、さらに国民も積極的に取り組むべき重要課題である。

ストローは海洋プラスチックごみの1%以下と言われている。しかしながら、プラスチック問題の中でもストローは比較的簡単に対応しやすいと思われる。ストローは子供、高齢者などの例外はあるものの、多くの人は使用しなくても済まされるはずである。そして、無意識に使っていたストローはプラスチックでも紙製でも不要な使用は極力避けるべきである。

コンビニエンスストアでペットボトル飲料を買うとレジ袋に入れてくれる。マイボトルを携帯すれば、その両方を使わないで済むことになる。また、カフェにマイボトルを持ち込めば、ストローおよび使い捨て容器の減少にもつながる。少額ではあるが値引きしてくれる店もある。スーパーマーケットに買い物に行くときはマイバッグ(エコバッグ)を持っていけば、レジ袋を使わないで済むのである。

われわれ国民にできることには限りがあるが、いままで何気なく行っていた生活習慣を見直せば、少しではあるが環境保全に寄与するのではないか。

「さあ、マイボトルを持って街に出かけよう!」