Tuesday, 27 November 2018 08:52

■韓国国民年金のスチュワードシップ・コード導入が韓国金融業界にもたらす影響

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2016年末に制定された韓国版スチュワードシップ・コードは、2017年に入り、機関投資家が受入れを続々と表明した。2018年11月現在、70の機関投資家が受入れを表明している。機関投資家のスチュワードシップ・コード受入れが拡大していく中、韓国国民年金公団(以下、韓国国民年金)が2018年7月にスチュワードシップ・コードの受入れを表明した。

韓国国民年金は約544兆ウォン(54兆円)もの資産を運用する国内最大の機関投資家であり、世界でも有数の年金基金である。2015年、韓国国民年金がサムスン物産と第一毛織の合併に賛成した理由が政治的な圧力を受けたからだという疑惑が浮上し、基金運営の不透明性を露呈する形となったことがあった。サムスンだけでなく、800近い上場企業に投資している国民年金は今後、このような疑惑を繰り返さないためにもスチュワードシップ・コード受入れが急務であった。そして、今回スチュワードシップ・コードを受け入れたことに多くの注目が集まった。

韓国国民年金がスチュワードシップ・コードを受け入れたことで、韓国の金融会社、特に金融持株会社および銀行に影響が出始めている。発行体としての金融会社のESG(環境、社会、ガバナンス)などの非財務的要素が、財務的要素に加え、投資家の判断に影響を与える日は遠からず来ると、業界関係者らは指摘する。

韓国金融研究院の「機関投資家のスチュワードシップ・コードの強化による国内金融会社の対応課題」レポート(2018年11月発行)は、韓国国民年金および機関投資家の株主権行使強化に伴い、所有規制により所有が分散しており、支配株主がおらず、機関投資家や韓国国民年金が筆頭株主もしくは主要株主になる金融会社では、所有の集中や循環出資を通じて高い支配権を維持することができる事業会社より、はるかに大きな影響を受ける可能性があると指摘している。韓国国民年金は金融持株会社および銀行などの金融機関の株式をそれぞれ平均9%以上保有しており、株主価値の向上を目的とした議決権を積極的に行使することが可能で、実際に国民年金が反対票を投じたことで議案が否決された例がある。

韓国版スチュワードシップ・コード(機関投資家の受託者責任に関する原則)と国民年金のスチュワードシップ・コード(機関投資家の議決権行使指針)は、投資先企業の非財務的要因を定期的に点検するという原則を含み、発行体としての金融会社も例外ではない。機関投資家が金融会社のESG要素を評価する場合、評価対象である金融会社は投融資など金融サービスを提供するため、これにより発生するESGリスクも複合的に考慮しなければならない。現状としては、機関投資家サイドは金融会社と非金融会社間のESG要素評価に対する相違点を十分に理解しておらず、金融会社に対する適切なESG評価が実施できない可能性が高い。すなわち、今後ESG評価において、発行体である金融会社と非金融会社のESG評価の区別が必要になってくる。

金融会社は自身を対象にした株主行動が歪曲されないよう、広範囲のESG要素に関連するリスク、中でも規制・評判リスク・信用リスクなどに留意し、リスク管理とリスクガバナンスを整えるとともに、すでに実施したESG要素に関連した投融資案件を再評価し、効率的に再配分する必要がある。また、非金融会社との差別化されたESG評価と関連する株主およびその他のステークホルダー(政府、預金者、従業員など)とのコミュニケーション強化、サステナビリティ報告書など関連情報公開の拡大などが要求されることになるだろう。

財閥の圧力により遅れを取っていた韓国のスチュワードシップ・コードの受入れがようやくスタート地点に立った。それに合わせる形で、韓国の金融業界のESG対応にも拍車がかかっている。70の機関投資家に加え、39の機関投資家が韓国版スチュワードシップ・コードの受入れを予定している。2019年は、韓国のESG投資市場が拡大する年になるであろう。

出典

Korea Institute of Finance報告書
「国内スチュワードシップ・コードの実効性確保のための先決課題」(2017年11月発行)


Korea Institute of Finance報告書
「機関投資家のスチュワードシップコード強化による国内金融会社の対応課題」(2018年11月発行)


KOREA STEWARDSHIP CODE
http://sc.cgs.or.kr/about/sc.jsp(参照:2018-11-26)


中央日報(2016-12-20)
https://news.joins.com/article/21020896(参照:2018-11-26)

毎日労働ニュース(2018-5-25)

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=151735(参照:2018-11-26)