Tuesday, 11 December 2018 10:35

■中国本土コーポレート・ガバナンス原則にESG要素を導入

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2018年9月30日、中国証券監督管理委員会(CSRC)は、G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則改訂版(2015年)を参考に、中国本土の上場会社コーポレート・ガバナンス原則改訂版(上市公司治理准則、以下改訂准則)を公布した。CSRCは、2002年の初版准則公表以来、中国本土の上場会社における不正防止や経営体制の監視を強化してきたが、今回、16年ぶりに改訂を行った。

改訂准則には、イノベーション、コーディネーション、グリーン、共有という理念に根差した社会的責任を果たすべく、事業活動に伴う環境情報(E)、法令に則った社会的責任の履行状況(S)およびコーポレート・ガバナンス方針(G)を開示する必要があると明確に記載された。2018年6月に改訂された日本のコーポレートガバナンス・コードと比較しても、ESGに関する規定は一歩先んじたと言える。

今回改訂のポイントは、次の通り。

  1. ESG理念を初めて改訂准則に導入した。中国の上場会社は「イノベーション、コーディネーション、グリーン、オープン、共有」という発展理念を徹底し、環境保護と社会的責任においてリーダーの役割を強化するよう求めた。
  2. OECD原則と整合させた。中国資本構造の特性を念頭に、株主の基本的な権利を確保するとともに、支配株主、実質的支配者および関連当事者に対する規制を強化し、少数株主の利益を保護強化した。機関投資家は、法令に基づく企業統治に積極的に参加し、議決権行使結果を含め議決権行使方針を開示すべきとした。
  3. 企業の財務および経営成績、取締役会および経営陣の報酬、関連当事者間取引などの重要事項の開示以外にも、環境保護及び貧困削減に対する対応も開示すべきとした。
今回の改訂は、香港市場の経験を活かしたとも言える。香港証券取引所は、2015年に上場規則におけるESG報告ガイドを強化し、2017年から上場会社によるESG情報開示を義務化した。中国も現在、ESG報告ガイドの作成を検討している。更に、2020年から上場会社による環境情報開示の義務化を検討中である。

改訂准則の概要:

改訂准則 (2018年9月30日)

1.総則
上場会社は、イノベーション、コーディネーション、グリーン、オープン、共有という理念を徹底・実行し、企業の社会的責任を果たすべきである。(第3条)

2.株主と株主の権利
少数株主の権利を確保し、利益配分方法を明確化。
上場会社は会社定款に利益配分方法、特に現金の配当方法を明確に記載すべきである。
上場企業は現金配当の方針策定及び実施状況を開示すべきである。条件を具備した利益配当を行わない場合、その理由を説明すべきである。(第10条)

3. 董事と董事会
上場会社の董事会は監査委員会を設置すべきである。必要に応じて戦略委員会、指名委員会、報酬と業績評価などの専門委員会を設置することができる。監査委員会の委員の1人以上は会計専門家でなければならない。(第38条)

4.と監
上場会社は、規制に従って社外監事を設置することができ、監事は専門的な知識や経験を有するべきである。上場会社の取締役および高級管理職は、監事を務めてはならない。(第45条)

5.高級管理職とインセンティブ・制約メカニズム
法令及び会社定款の遵守を前提とした管理職の権利と責任の明確化。

6.支配株主並び関係者と上場会社
支配株主及び実質的な支配者は、支配権を使って上場会社及びその他の株主の正当な利益を侵害したり、不正な利益を求めたりすることは許されない。実現できないことをコミットすることも許されない。(第63条)

7.機関投資家とその他の関連機関
機関投資家は、上場会社取締役の選任、経営陣の監督、重要課題の意思決定において役割を果たすべきである。
機関投資家は、法令に従って、議決権、照会権、株主提案権を行使し、コーポレート・ガバナンスに合理的に参加することが奨励される。(第78条)
機関投資家は、上場会社のガバナンスに参加する目標と原則、議決権行使状況及び効果を開示することが奨励される。(第80条)

8.ステークホルダー、環境保護と社会的責任
上場会社は、グリーンの理念を積極的に実行し、生態環境保護の理念を会社の発展戦略とガバナンスに統合し、エコ文明の建設を積極的に推進し、汚染防止、省エネ、生態環境保護において大きな役割を果たすべきである。(第86条)
上場会社は、会社の持続可能な発展を目指し、株主の利益を最大化する一方で、社区福利(地域社会の福祉サービス)、貧困層の支援、環境保護、公的福祉事業における社会的責任を積極的に果たすべきである。(第87条)

9.情報開示と透明性
上場会社の情報開示は定期的な開示、コーポレート・ガバナンスの開示、株主権利の開示という3つの部分からなっている。
上場会社は、すべての株主及びステークホルダーに対して「実質的に影響を及ぼすことがありうる」情報を開示すべきである。上場会社の取締役は情報開示の第一責任者である。(第93条)
上場会社は法令に従って、環境情報及び貧困緩和などの社会的責任に関する状況を開示すべきである。(第95条)

10.附則
本改訂原則は発行日より実施され、旧原則(2002年版)は廃止される。


出典:中国本土の上場会社コーポレート・ガバナンス原則改訂版(中国語原文)
http://www.csrc.gov.cn/pub/zjhpublic/zjh/201809/P020180930584077967335.pdf