2018/12/30(日) 19:20

■東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本のペイメント市場の現状

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筆者は韓国から戻り、久しぶりに、東京で2ヶ月の間、生活している。

現金をおろしに、ATMへ・・・
日本に帰ってくるとまず、現金をおろすことから始める。韓国では現金をほぼ持たない生活を送っているため、ATMに行くことがほとんどない。ATMに行くとしても、「引き出し」に行くことはなおさらなく、どちらかと言えば「預け入れ」に行く回数が圧倒的に多い。


2c538c8f63a83e01bdc7778f40f54af9日本に戻って来るたびに、お財布に現金を補充する私であるが、今回はその現金の減りが遅い。今までもクレジットカードを利用できるところではカードを使っていた。今回もそれは変わらない。何が変わったのかというと、「Apple Pay」を利用するようにしたことだ。Apple PayにSuicaを置くことで、チャージはスマートフォン端末でできるようになった。もちろんクレジットカード決済で。


私は気づいた。一番現金消費していた部分は、Suicaのチャージだったのだ。VIEWカードを持っていない私は、Suicaチャージはもっぱら切符売り場での現金チャージだった。しかし、Apple Payを利用することで、カードのブランド関係なく、チャージが可能になったのだ。


モバイルウォレット利用の拡大
Apple PayはApple Payだけでは決済できない。その裏に決済カードを紐づける必要がある。要はアグリゲーターの役割を果たすものである。このアグリゲーターの役割を果たすモバイルウォレットが浸透してくることで、日本のモバイルペイメント業界も勢いがついたように感じる。

日本は非接触決済カードが乱立している。交通系カードから始まり、各大手小売店、携帯キャリアなど、多様な業種から非接触決済カードが発行されている。交通系カードといくつかの大手小売店の非接触プリペイドカードが市場を寡占している状況が長年続いている中、新たにこの事業に参入する企業も多い。いっときは、乱立はお互いの領域を侵食し合い、業界の成長を妨げると言われていたが、Apple PayやGoogle Payなどウォレットの使い勝手が向上することで、そのような考え方も変わってきている。
ウォレットに格納できるのであれば、非接触決済カードの種類は消費者がケースバイケースで選択すればいい。もちろん、まだモバイルウォレット対応のスマートフォンを持っていないとか機能はあるが使っていないという方もいるだろう。そこがボトルネックになっているとは言え、日本のキャッシュレス化は大きく前進したと実感した。


キャッシュレスへの不安
ここ最近、PayPayの影響で、連日、モバイル決済が話題の中心にある。街頭インタビューなどを見ると、便利だという人もいるが、目立つのは不正利用に対する懸念だ。日本では、現金で支払うことへの安心感が未だ根強い。(もちろん、キャッシュレス決済が断然良いという方も多いが)

少し古いデータではあるが、統計を見てみると、日本のキャッシュレス化の遅れが一目瞭然だ。韓国は約9割がキャッシュレス決済なのに対し、日本は2割にも満たない。韓国以外にも多くの国でキャッシュレス決済が進んでいることが以下の図から見て取れる。2018年現在は、日本のキャッシュレス化の割合がもう少し上がっていると予想されるが、まだまだ現金決済が優勢であることには変わりない。


東京オリンピック・パラリンピックがもたらすキャッシュレス化の影響
韓国でここまでキャッシュレス化が進んだ背景には政府の積極的な後押しがある。クレジットカードの積極利用を1990年代後半に展開し、年間2400万ウォン(約240万円)以上の売り上げがある店(塾なども含む全ての業種)の場合、カード端末機の設置を義務付けた。また、カード端末機を設置しているのに、カード決済を拒否すると罰則が課せられる(1年以下の懲役/1000万ウォン(約100万円)以下の罰金刑)制度も設け、カード決済を政府から盛り上げていった背景がある。

日本も政府がキャッシュレス化を推進することで、キャッシュレス化が徐々に進んでいる。また、多様なサービスがすでに存在しており、起爆剤になるきっかけが必要な状況である。その起爆剤となりうるのが2020年東京オリンピック・パラリンピックではないか。

東京オリンピック・パラリンピックに向け、キャッシュレス化を進めなければという考えは、政府も企業も一致している。上の表にもあったが、キャッシュレス決済が進んでいる国は多い。訪日外国人を多く迎えることになる東京オリンピック・パラリンピックだが、現金決済が主流のままではキャッシュレス決済に慣れた外国人からすると不便に思うことが多いだろう。例えば、両替をするのに、両替所に列ができる、日本円に慣れていない外国人が現金で支払うとなると、時間がかかるなど非効率なことが多く発生する。店舗側の効率性向上と消費者側の利便性向上、どちらにとってもキャッシュレス化を推進すべき課題である。


普及に立ちはだかるさまざまな課題
日本はキャッシュレス化を推進する上で十分な技術力を保有している。非接触決済ブランドも多い。各企業も積極的にキャッシュレス決済を普及させようとしている。

しかし、消費者のうち、現金決済に安心感を感じる人は未だ多く、またフランチャイズチェーンではどこもカード決済は可能であるが、小規模店舗ではカード端末機設置費用やカード決済手数料などから現金決済を好むケースも未だ見かける。

PayPayが今年の師走を賑わせたが、QRコード決済の不正利用があったとのニュースが流れた。このようなニュースが流れると、セキュリティに対する不安がまた浮上してくる。

このように、日本でモバイル決済を含む非現金決済の浸透が他国に比べ、遅いのには複合的な要因が背景にある。現金を持ち歩くことへのリスクも他国に比べて低く感じているという点も影響しているのかも知れない。

日本でキャッシュレス決済の伸びが遅い要因を断定することは難しい。しかし、世界の潮流はキャッシュレス決済、特にモバイル決済に向いている。モバイル決済(主にプリペイド)サービスが日本ほど多様な国も珍しい。それだけ可能性がある証拠だと筆者は考える。

出典: 経済産業省 キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf 韓国国税庁
https://www.nts.go.kr 韓国与信金融協会
https://www.crefia.or.kr (参照:2018-12-18)