Tuesday, 22 January 2019 11:42

■SDGs経営とESG投資は表裏一体

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「SDGs経営/ESG投資研究会」の開催
経済産業省は2018年11月7日、「SDGs経営/ESG投資研究会」を設置し、同年11月26日に第1回会合を開催した。
事務局は、経済産業政策局産業資金課で、委員メンバーは、事業会社トップ11名、大学関係2名および機関投資家3名の合計16名から構成されている。オブザーバーとして、外務省、金融庁、公益社団法人経済同友会、一般社団法人日本経済団体連合会、一般社団法人日本投資顧問業協会、株式会社日本取引所グループ、独立行政法人日本貿易振興機構および一般社団法人Japan Innovation Networkが参加する。

今後、月1回程度開催し、2019年春を目途に議論のとりまとめを行う予定とされている。(なお、本研究会は非公開)

研究会設置の趣旨
2006年に国連が責任投資原則(PRI)を定めて以降、持続可能性を重視するESG投資はEUを中心として拡大を見せている。PRIに署名した機関は全世界で2,000を超えており、その運用機関の運用資産総額も80兆ドルを超え、もはやメインストリームになったと言っても過言ではない。そして、2015年の国連サミットにおいて、グローバルな社会課題を解決し持続可能な世界を実現するための国際目標であるSDGsが採択された。

これを契機にグローバルに展開する企業がSDGsを経営の中に取り込むことでESG投資を運用戦略に取り入れた機関投資家等の資金を呼び込もうとしている。日本においても、SDGsと経営を結び付けることで企業価値を高めるべく先進的な取り組みを進めている大企業およびベンチャー企業も見受けられるようになってきた。

政府は2016年5月、SDGs推進本部を設置し、2018年6月に同本部がとりまとめた「拡大版SDGsアクションプラン2018」の中で、日本企業がフロントランナーとしてSDGsを実現するため「SDGs経営推進イニシアティブ」を進め、企業の経営戦略にSDGsを組み込むことを推進する方向性を打ち出した。

本研究会においては、国内外のSDGs経営の成功事例に焦点を当てつつ、如何にして企業がSDGsを経営に取り込んでいくか、また、投資家はどういった観点からそのような取り組みを評価するのか等について議論する。持続的に企業価値を向上させる企業へ投資することが中長期的に収益を生み出す循環をさらに後押ししていく。2019年6月に開催されるG20サミット大阪等に向けて、本研究会の成果を国際的に発信していくことも予定していると思われる。

そのため、SDGsというグローバルな社会課題の解決に如何に取り組むかという、企業の部門を超えた、経営そのものに関わる課題に関する議論を行う必要から各分野の事業会社のCEOや、SDGsを大学経営に積極的に取り込みつつある大学の長がメンバーとなっている。併せて、機関投資家のCIOクラスの参画を仰ぎ、投資家の視座からの意見も参考とする。

SDGs経営とESG投資は表裏一体
企業がその価値を向上させ、株式市場をはじめとした金融市場で積極的に評価されることを否定する経営者はいないだろう。

そのためには、機関投資家に響く情報開示が必須である。情報があるから機関投資家、評価機関は投資対象企業を評価し、アセットオーナーから委託された資金をその企業に投資できるのである。開示するのは、現在の財務情報および非財務情報だけでなく、将来情報、3-5年の中期経営計画のタイムスパンではなく、せめて2050年くらいを見据えた経営ビジョン、経営戦略、事業戦略、財務戦略を含めた非財務情報も必要である。長期の機関投資家は非財務情報を見ることでその企業の将来の財務情報を導き出そうとする。まず、企業経営陣は情報開示の重要性を認識しなくてはならない。

次に、経営ビジョンおよび経営戦略等はボトムアップで策定、実現できるか。否である。経営陣、ひいてはその経営トップが道筋をつけるべきである。しかし、単なる絵に描いた餅ではなく、実現可能性のある具体的戦略を立てることが肝要である。企業を取り巻く事業環境は大きく変わろうとしている。環境課題、社会的課題に配慮した社会の枠組みの中で、企業が超長期的に持続可能性を維持できるかを経営者自ら説明責任を果たしていく。経営陣はSDGs経営を意識し、実践していかなければならない。

そして、将来のビジョン、戦略を実現化させるためには、遂行できる人材が必要であり、経営陣足りうる人材を今から順次育成する必要がある。戦略と人材は車の両輪である。
現在のトップが、退いてもその影響力を及ぼすことができる子飼いを指名するようなモラル、透明性を欠いた後継者指名では、持続可能な企業にはなれない。改訂ガバナンスコードにも示されている「サクセッションプラン(経営者の後継者育成計画)」「役員の選解任基準の制定」そして、業務執行役員を除いた「指名・報酬委員会」を設置し、説明責任を全うできるような経営プロセスをワークさせなければならない。

企業は、現在の財務情報、非財務情報だけではなく、将来情報を統合報告書というツールに反映すべきである。長期の機関投資家は、そのような統合報告書の内容も踏まえながら持続可能な企業へ資金を投入する判断を行うのである。

既に400を超えた企業が統合報告と銘打ったレポートを公表しているが、その内容を見る限りは、まだまだの感が強い。しかし、時間はない。経営陣のリーダーシップ、そして、その企業を取り巻くステークホールダーへ配慮した経営を示してほしい。

<参考>
第1回SDGs経営/ESG投資研究会配布資料(2018年11月26日)経済産業省
http://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sdgs_esg/001.html
(参照:2019-1-4)