2019/02/19(火) 10:27

【セミナー参加レポート】金融庁・経済産業省連携「TCFDイベント」

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金融庁・経済産業省連携TCFDイベントとして、2019年2月12日、13日の2日間にわたって、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)をテーマとするシンポジウムが開催された。
12日は、金融庁・日本取引所グループ(JPX)主催で「TCFDを巡る企業と投資家の対話:今後の展望」について、13日は、経済産業省・TCFD共催で「企業と投資家の対話 ―TCFD・シナリオ分析―」について、それぞれ行われた。両日とも会場は満席で、企業および機関投資家の関心の高まりを感じた。

12日には、清田JPXグループCEOが冒頭挨拶で「当グループは、ESG投資においても発行体企業と投資家を結びつける」と表明し、結びの挨拶では、遠藤金融庁長官が「気候変動を含む企業情報開示が投資家との建設的な対話促進、適切な投資判断につながり、経済の好循環を実現する」とTCFDへの賛同を求める発言があった。
基調講演は、TCFDのシャピオ特別顧問および2018年12月26日にTCFDに賛同した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋理事長が「GPIFのESG投資とグローバル環境株式指数への期待」について行った。

プレゼンテーションは、経済産業省産業技術環境局 亀井環境経済室長が「TCFDに関する経済産業省の取り組みについて」および環境省地球環境局 岸地球温暖化対策課課長補佐が「環境省 TCFDに対応したシナリオ分析支援事業について」であった。
パネルディスカッション「日本におけるTCFD普及の展望」には、金融庁、TCFD、東京海上HD、三菱商事およびニッセイアセットマネジメントが参加した。

13日には、経産省産業技術環境局 飯田局長が冒頭挨拶で「環境問題は成長戦略、産業政策として捉えている。TCFD研究会ガイダンスを2018年12月26日取りまとめた。
企業に要請するのは完璧な開示ではなく、スピードが大事」と述べた。
基調講演は、TCFDのラべネルSecretariatおよびGPIFの水野理事兼CIOが行った。
プレゼンテーションは、一橋大学大学院経営管理研究科 伊藤特任教授が「経済産業省 TCFDガイダンス」、金融庁 池田国際室長が「投資家との対話の重要性と企業情報開示」およびブルームバーグNEF 黒崎日本・韓国市場分析部門長が「戦略立案につながるTCFDシナリオ分析」について、それぞれ行った。
パネルディスカッション「TCFDを用いた事業者と投資家の対話」には、伊藤特任教授、JFEスチール、住友化学、アムンディ・ジャパンおよび三菱商事が参加した。

2019年2月5日現在、日本のTCFD支持表明機関数は、金融庁、経済産業省、環境省およびGPIFをはじめとして52機関となり、世界の586機関が支持表明している中、イギリス、アメリカに次いで第3位にランクアップした。

経済産業省が2018年8月TCFD研究会を立ち上げ、5か月で「TCFDガイダンス」をまとめ上げたスピード感に驚くとともに、やや積極的姿勢が見受けられなかった金融庁に前向きな発言が見られたことで行政サイドが積極姿勢に転じたことを肌で感じた。遠藤長官がシンポジウムで挨拶したこともその表れであろう。

今後のスケジュールは、
  • 普及啓発では、経済産業省、金融庁および環境省共同で、産業界と金融界の対話のプラットフォームを設置し、2019年4月にTCFDコンソーシアムを立ち上げ、あわせて署名式を行う予定である。
  • ガイダンス改訂では、事例検討ワーキングを開催し、来年度以降、検討ワーキンググループを立ち上げ「TCFDガイダンス」の改訂を実施する予定となっている。

TCFD提言、TCFDガイダンスに対して、企業は、戦略に関するシナリオ分析による情報開示に戸惑いを感じている。機関投資家は、重要情報が財務情報として開示されていないことに問題意識を持っている。気候変動リスクが企業財務にどのような影響を及ぼし、そのインパクトがビジネスモデル、経営戦略にどう反映し、どう対応するかが重要であると捉えている。企業経営層が、TCFDの課題を認識したうえで、取締役会が情報開示に関与することが重要と考えている。
まずは、企業全体でTCFDについて共有したうえで、任意の開示媒体(統合報告書、サステナブルレポート等)で開示し、投資家との対話の中で今後、開示情報の充実を図っていくことが重要であろう。

金融庁は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書を開示媒体として考えているが、任意媒体に情報開示することを否定はしていない。今後、有価証券報告書に記載するためには金商法第172条の4および197条の虚偽記載による課徴金納付および罰則規定が企業にとってハードルが高くなることから金商法の見直しも検討の余地が出てくることになろう。

<参考>
金融庁・日本取引所グループ(JPX)主催シンポジウム
https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20190121.html

経済産業省・TCFD共催シンポジウム
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/tcfd_symposium.html