2019/02/22(金) 22:28

■「枯洲の森で晴読雨読」③ 『コンビニ外国人』芹澤健介著

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日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が2019年1月22日に公表した「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」2018年12月度によると、対象のJFA正会員コンビニエンスストア本部7社の実績は、店舗売上高約9,690億円、店舗数55,743店、来店客数約14億6千万人、平均客単価663円である。2018年1年間では、売上高は10兆9,646億円、来店客数は174億人という驚くべき数字となっている。

因みに、乱立気味だったガソリンスタンド数は、資源エネルギー庁発表の最新統計では、2018年3月末時点で30,747給油所と30年前と比べて半減している。日本百貨店協会が発表した2018年全国百貨店売上高は5兆8,870億円、全国スーパーマーケット協会等が発表した2018年スーパーマーケット売上高は10兆7,775億円、近年急成長しているドラッグストアでも年間売上高は6兆円台である。小売業界でのコンビニエンスストアは際立った存在となっている。今や我々の日常生活で必要不可欠の「社会インフラ」と言っても過言ではない。

昨今、従来の食品中心の商品構成から変化し、ATM、チケット購入、公共料金支払い、宅配便の発送・受取りなどのサービス提供のウエイトが高まりつつある。最新の商品構成は、売上高ベースで日配食品36.6%、加工食品25.6%、非食品30.9%、そしてサービスが6.9%まで占めるようになった。

さらに、高齢者や世帯人員減少によって出現している新たなニーズに対して、宅配・移動販売・ネットスーパー機能や生活支援機能の提供、医薬品や生鮮食料品等の商品ラインアップの拡充も見られる。社会的責任の一環として「まちの安全・安心の拠点」の役割を担うセーフティステーション活動も積極的に推進している。

その一方で、2月の「恵方巻」に代表される食品廃棄問題、プラスチックストロー、レジ袋など環境問題で注目されている。また、一部の店舗で実験的に深夜時間帯の一定時間閉店、無人営業を行っているところもあるが、業界最大手が「24時間営業は続ける」と公言している以上、競争上から他社も当面深夜営業を取りやめることは難しいだろう。深夜営業に伴うスタッフの労働問題も消費者の利便性の代償として重い課題である。

コンビニエンスストアで働く就業者は増加の一途をたどり、現状70万人を超えている。一方、昨今の人手不足の影響を受け、コンビニエンスストアにおいても人材の確保が難しく、喫緊の課題となっている。それを補っているのが高齢者や留学生を中心とした外国人スタッフである。

2018年12月14日新たな在留資格制度の創設を盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(改正入管法)が公布され、一部の規定を除き2019年4月1日施行される。併せて、2018年12月25日、政府は、外国人材の受入れ・共生のための取り組みをより強力かつ包括的に推進する観点から「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を公表した。法改正によって、今後5年間に農業、介護、建設、外食業などの14分野に最大34万5千人の外国人の受入れが見込まれる。

これだけ多くの外国人が日本でコミュニケーションギャップを感じないで働いてもらうためには、日本語教育の拡充が最重要課題と言える。現状でも、留学資格のための日本語教育は、十分とは言い難く、かつ問題を多く抱えている。日本語教育機関の所管官庁の一本化、教育機関の増設、日本語教師の待遇向上など、外国人受入れと並行的に進めていかなくてはいけない重要施策である。

現在でも不足している日本語教師は、今後一層ニーズは高まる。そのために増加する高齢者にその役割を担ってもらうための仕組みづくりも必要である。

枯洲の森(烏森)周辺には、コンビニエンスストアは20店舗近くある。
コンビニ激戦区の枯洲の森で、晴読雨読する「フクロウ」がお薦めする書籍は、芹澤健介著『コンビニ外国人』(新潮新書)である。

飲食店、ドラッグストア、コンビニで外国人を見かける風景はもはや珍しいことではなくなった。日本に在留する外国人は247万人、うち外国人労働者は128万人とこの10年間で2.6倍に増加した。コンビニに努める外国人は大手3社だけでも4万人を超えているという。実際にコンビニで働いている外国人にインタビューして、その実態と問題を浮き彫りにしたのが本書『コンビニ外国人』である。

コンビニに外国人スタッフが最近増えた最大の理由は、人手不足である。これはコンビニに限ったことではなく、中小零細の製造業、コンビニを支える食品製造工場も然りである。その多くが大学や日本語学校に通う留学生だという。海外に専用の研修施設を設け、店舗作業の事前研修を行い、即戦力を期待している会社もある。

日本フランチャイズチェーン協会は、技能実習法に基づく外国人技能実習制度の対象に「コンビニの運営業務」を追加するよう動いている。表向きの理由としては、日本で経験を積んだ実習生に母国に戻ってコンビニ展開の一翼を担ってもらうということだが、留学生だけでは慢性的な人材不足を解消できないというのが背景にある。留学生が週28時間以下の労働しかできないからである。技能実習生であれば、労働時間も長くできるし、賃金も実質的に低コストで雇用できる。しかし、現状認められている77職種でも技能実習制度は人権・労働環境問題で負の側面を多く抱えている。

さらに、留学生が通う日本語学校は、日本語教育機関とは言え、管轄は文部科学省ではなく、法務省であり、その監督が甘いがゆえに経営者に問題がある学校も少なくないという。そこで教える日本語教師の多くはボランティアであり、待遇の改善が必要であると指摘している。

本の最終章「町を支えるピンチヒッター」で、東京都新宿区等における外国人との共生について取り上げている。新宿区には4万2千人を超す外国人が住んでいて、区民全体の12%を占めているという。今後増加する外国人を地域で受け入れていくためには、国籍・人種・宗教などのダイバーシティを国および地方行政の施策に組み入れることは必須であろう。

この本では、外国人労働者の実態を垣間見るとともに、利用者の利便性の追求の代償として、環境問題、労働・人権問題が潜んでいることを改めて考えさせられる。国、経済界は、労働力不足をコストの安い外国人で補充出来ればいいと安易な対応を続けると、いずれ日本は海外から就業の場として選択されなくなるだろう。社会的コストの増加は避けられないが、外国人を単に労働力補充としてだけでなく、法律の趣旨に則り、外国人材を育成し、海外へ貢献していくという観点が必要であろう。

そして、我々利用者は、今までの延長線で今後もコンビニを利用し続けていいのだろうか?

「便利さは誰かの犠牲で成り立っている」ということを忘れてはならない。

参考:
◆『コンビニ外国人』
(芹澤 健介 著/2018年 新潮新書760円)