2019/03/01(金) 07:42

■「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正について

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2018年6月28日公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告「─資本市場における好循環の実現に向けて─」は、有価証券報告書における開示を念頭に、その他の開示(会社法開示、上場規則、任意開示等)との関係にも配慮しつつ、企業情報の開示の包括的な検討を行った内容が盛り込まれた。

具体的には、「財務情報」および「記述情報(非財務情報)」の充実、建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供、情報の信頼性・適時性の確保に向けた取り組みならびにその他の課題(EDINETの利便性の向上、有価証券報告書の英文による開示の推奨など)について、適切な制度整備を行うべきとの提言がなされた。

さらに、今後の取り組みとして、プリンシプルベースのガイダンスの策定、開示のベストプラクティスの収集・公表および開示ルールの策定(内閣府令改正)が示され、内閣府令の改正内容としては、役員報酬(報酬プログラム、報酬実績)、政策保有株式および監査人の継続監査期間等が検討項目とされた。

今般、この報告を受けて、金融庁は2018年11月2日「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下:改正開示府令)の改正案を公表し、パブリックコメントにかけたうえで、2019年1月31日公布、同日施行された。併せて、「企業内容等の開示に関する留意事項(企業内容等開示ガイドライン)」も改正された。

1.改正開示府令の主な改正内容
(1)財務情報および記述情報の充実
・経営方針および経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品およびサービスならびに顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載
・事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業に与える影響の内容、リスクへの対応策の説明
・会計上の見積もりや見積もりに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載

(2)建設的な対話の促進に向けた情報の提供
・役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載
・政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現行の30銘柄から60銘柄に拡大する

(3)情報の信頼性および適時性の確保に向けた取り組み
・監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求める

2.施行および適用
(1)2019年1月31日公布・施行
(2)改正後の規定の適用について
① 2019年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記「建設的な対話の促進に向けた情報提供」欄の記載の項目等)
具体的には
・役員の報酬等(業績連動報酬)
・株式の保有状況(政策保有株式)
・会計監査の状況(監査人の選定理由・評価)
・監査報酬の内容等
② 2020年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(上記①以外の項目)ただし、2019年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可
具体的には
・監査役監査の状況
・会計監査の状況(継続監査期間)
・経営方針・経営戦略等(経営者の認識の説明)
・事業等のリスク(主要なリスク)
・MD&A(財政状況、経営成績、キャッシュ・フローの状況の分析)

さらに、2018年12月21日金融庁は、「記述情報」について、企業が経営目線で経営方針および経営戦略等、経営成績の分析ならびにリスク情報を開示していく上でのガイダンスを、「記述情報の開示に関する原則(案)」として取りまとめた。2019年2月1日期限でパブリックコメントにかけられ、近々、寄せられた意見等を踏まえて公表されるものと思われる。

以上のように、上場企業は、経営方針、経営戦略等について、形式的な記述ではなく、主要な事業、リスク等と関連付けて記載すること、その際、取締役会、経営会議における議論を反映することが求められるのである。さらに、有価証券上場規程に規定される「コーポレート・ガバナンス報告書」のみならず、金融商品取引法に規定される「有価証券報告書」においても、政策保有株式に関して一層の詳細なディスクロージャーが求められることになった。

事業等のリスクは、企業の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクについて、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクへの対応策を記載することとある。

改正開示府令には、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下:TCFD)の最終報告書(以下:TCFD提言)および経済産業省「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」にある気候関連のリスクについては明示されていない。TCFDに賛同、署名した企業は、当面、統合報告書等の任意の情報開示媒体に記載することになる。そして、将来的に法整備ができた段階では、気候関連のリスクをはじめ、企業の持続可能性に影響を及ぼすリスクについて、有価証券報告書へ記載されることになるだろう。

改正開示府令の施行により、上場企業は、有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書等との整合性を図りつつ、経営者および取締役会は、投資家が経営者の目線で企業を理解できるように、説明責任を果たしていかなければならない。

<参考>
「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告「-資本市場における好循環の実現に向けて―」(金融庁 2018年6月28日公表)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180628/01.pdf
「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告「-資本市場における好循環の実現に向けて―」の概要
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180628/02.pdf
「企業内容等の開示に関する内閣府令」(金融庁 2019年1月31日公布・施行)
https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20190131/02.pdf
「企業内容等の開示に関する内閣府令」(附則)(金融庁 2019年1月31日公布・施行)
https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20190131/03.pdf
「企業内容等の開示に関する内閣府令」新旧対照表
https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181102_2/01.pdf
「企業内容等の開示に関する留意事項(企業内容等開示ガイドライン)」(金融庁 2019年1月)
https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20190131/04.pdf
「記述情報の開示に関する原則(案)」(金融庁 2018年12月21日)
https://www.fsa.go.jp/news/30//singi/20181221_1/01.pdf

(参照:2019-2-27)