2019/04/05(金) 15:14

■コンビニ・オーナーの団体交渉権否定と企業の人権を尊重する責任

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中央労働委員会(中労委)は3月15日、コンビニエンスストアのフランチャイズ・オーナーは労働組合法上の労働者に当たらず、本部がオーナーからの団体交渉申入れに応じなかったことは、不当労働行為に当たらないと判断した1
地方の労働委員会は、「オーナーは労働組合法上の労働者に当たる」として本部に団体交渉に応じるよう命じていたが、中労委はこの命令を取り消した。


中労委は、労働組合法に基づき設置された行政機関である労働委員会の一つである。労働委員会には、国の機関で、厚生労働省の外局と位置付けられる中労委と都道府県の機関である都道府県労働委員会があり、労働行為事件の審査や労働争議の調整などにあたる。中労委は、全国的に重要な不当労働行為事件の審査や労働争議の調整などにあたる。都道府県労働委員会の救済命令等の再審査も担う。

本件は、オーナーらでつくる「労働組合」が、セブン-イレブン・ジャパンやファミリーマートの本部が団体交渉に応じないのは不当労働行為だとして、労働委員会(労委)に救済を求めた事件である。セブン-イレブンについては岡山県の労働委員会が2014年、ファミリーマートについては東京都の労働委員会が2015年、オーナー側の主張を認め、団体交渉に応じるよう本部に命じた。本部はこれを不服として、再審査を申し立てていた。

中労委は、労働組合法上の労働者性について、「会社の事業の遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられ、労働契約に類する契約によって労務を供給し」、「労務供給の対価として報酬を受け取っている」との判断の枠組みを示した。それによれば、オーナーの独立した小売事業者としての「事業性は顕著」であり、オーナーが、本部との関係において「労働組合法上の労働者に当たると評価することはできない」と判断した。オーナーらの団体交渉権は認められなかった。オーナーらは行政訴訟を行う意向である。

中労委の決定についてセブン-イレブン・ジャパンは、「主張を認めていただけたことは有り難いと存じます」とコメントし、ファミリーマートは、「加盟者一人一人とのコミュニケーションを大切にしていきます」と話したという2

しかし、オーナーの労働者性が、日本の労働組合法上、否認されたからといって、人権尊重を企業に求める国際的な要請から、本部が逃れられるわけではない。

人権を尊重する企業の責任についての枠組みに「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」がある3。国連人権委員会が2011年に支持したUNGPは今や、多国籍企業から中小零細企業にいたるまで、全ての企業に期待されるコスモポリタンな行動基準になっている。UNGPでは、企業は「人権を尊重すべきである」とされ、企業活動や取引関係を通じて引き起こされる人権への悪影響や助長を回避、軽減し、対応することが求められている。

企業が遵守すべき人権とは、国際人権章典(世界人権宣言、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約)、国際労働機関(ILO)の中核的労働基など国際的に承認された人権である。人権を尊重する企業の責任は、「人権を保護する国内法及び規則の遵守を越える」ものとされる。

コンビニエンスストアの経営をめぐっては、24時間営業の原則の是非、ドミナント戦略が引き起こすカニバリゼーション、ローヤリティの料率とその計算方法、深刻な人手不足、オーナーの長時間におよぶ業務従事、オーナーや従業員の社会保険未加入事案など様々な問題があるのは周知のとおりである。

これらの問題を、国際的に承認された人権の観点から捉え直すことができるならば、本部もまた、自身の問題として、取引関係を通じた悪影響や助長の回避、軽減に取り組まなければならないことになる。それが国際社会の要請である。例えば、世界人権宣言の第3条は、全ての人が「生命、自由及び身体の安全に対する権利」を有することを、第25条は「自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利」を有することをそれぞれ確認する。こうした諸権利を根拠に、コンビニエンスストアの経営をめぐる問題を再構築することは十分可能である。
コンビニエンスストア大手はすでに、このことを自覚しているはずである。セブン&アイ・ホールディングスは、「サプライチェーン全体で人権に配慮した事業が行われるように注意を払い」とし4、ユニー・ファミリーマートホールディングスは、ステークホルダーと協働して「人とその権利を尊重」すると宣言している5
今回、中労委の命令の対象になっていないがローソンも「あらゆる場面で接する人々の人権を尊重する」としている6

中労委は、オーナーが労働組合法上の労働者 には当たらないにしても、「 適切な問題解決の仕組みの構築やそれに向けた当事者の取り組み、とりわけ、会社側における配慮が望まれること」を命令書で付け加えている7。この仕組みや取り組みとは、UNGPの枠組みにしたがってオーナーとの関係を修復し、改善することに他ならない。

1中央労働委員会「セブン-イレブン・ジャパン不当労働行為再審査事件 (平成 26 年(不再)第 21 号)命令書交付について」
https://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-31-0315-1.pdf
「ファミリーマート不当労働行為再審査事件 (平成 27 年(不再)第 13 号)命令書交付について」
https://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-31-0315-2.pdf

2 NHK NEWS WEB 2019年3月15日付https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190315/k10011849971000.html

3国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/

4セブン&アイ・ホールディングス「セブン&アイグループ企業行動指針」https://www.7andi.com/csr/policy/guidelines.html

5ユニー・ファミリーマートホールディングス「サステナビリティ基本方針」http://www.fu-hd.com/sustainability/management/policy.html#ac02

6ローソン「ローソン倫理綱領」http://www.lawson.co.jp/company/corporate/system/compliance/detail/pdf/ethics.pdf

7中央労働委員会「審査・再審査事件命令書交付(平成31年)」https://www.mhlw.go.jp/churoi/futouroudou/h31.html