中村 友亮(プリンシパルコンサルタント)

中村 友亮(プリンシパルコンサルタント)

世界の人口は増加を続け、2050年には90億人を超えると予想される。こうなると、2050年までに世界全体の食料生産を2005年から2007年レベルと比べ60%増やす必要があるという(世界食料農業白書2014年報告*1)。しかし、農地の拡大は見込めない。
人類は現在、地球上の凍土を除く土地の38%を農業に使っている*2。その1/3が作物の栽培に使われ、残りは家畜のための牧草地と放牧地である。それ以外の土地のほとんどが砂漠、山岳、ツンドラ、都市であるという。
耕地面積を増やさず、品種改良によって食料の大幅な増産を実現するという提案は魅力的に映る。
世界の二酸化炭素排出量は過去3年間安定していたが4年ぶりに増加に転じた。世界の平均気温上昇を産業化以前に比べて2℃未満に抑えるためには、「パリ協定」で各国が目標として掲げた温室効果ガスの削減量を3倍に、1.5℃未満に抑えるためには5倍にする必要がある。国連環境計画(UNEP)が11月に公表した2018年版の「排出ギャップ報告書(Emissions Gap Report)」はそう指摘する。このままでは、今世紀末までに世界の平均気温は約3℃上昇するとも警告する。
「持続可能な開発目標(SDGs)」を中核とする「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が、「国連持続可能な開発サミット」で採択されて3年余りがたつ。目標達成に向けて、企業も積極的に参加している。目標2「飢餓をゼロ」に着目してみよう。「経団連SDGs特設サイト」によれば、キリンホールディングス、アサヒグループホールディングスといった飲料メーカーをはじめ様々な業種で日本を代表する企業が名乗りをあげている。
産業革命期の工場法は労働者保護普及の「触媒」となった
産業革命期に革新者オーウェンの実験に始まった労働者保護の実践は、一部の先進的な工場に波及するにとどまった。次々とフォロワー工場を巻き込み、その実験自体が「当たり前」の企業プラクティスとして社会に受け入れられることはなかった。
現代の労働問題への対応は企業に利益をもたらすのか?

長時間労働の是正は企業に利益をもたらす。それが産業革命期の工場法の経験であった。

しかし、その利益は長期的に実現される。より良い労働環境と労働条件、十分な報酬でもって労働者に報いたとしても、生産性の向上につながる作業能力の向上をもたらすまでには、一定の時間がかかる。また、生産技術革新のための研究開発投資や設備投資が利益をもたらすのにも一定の時間がかかる。そのため、経営者には、「長期的な視野をもって」経営に当たることが求められる。長時間労働の是正に伴う研究開発投資や設備投資や人材投資が、企業に長期的な利益をもたらすという先見性とそれを実現するための戦略立案能力、実行力等の経営能力が必要になる。さらに、そうした投資支出に耐えうるだけの資本力をもった安定した企業であることが要求されるであろう。
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